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東京人工群島
1992年作品
農業工学科 |
氷原公魚/著
written by Wakasagi_Hihara.
東京都立洋上大学基礎工学部農業工学科畜産研究講座。 農工学科の中心となる組織である。従って、施設ももっとも充実し、全農工学科の基調となっている。
そもそも農工学科は、有名な農学者である白葉教授が、群島部の食料自給問題について都から相談を持ちかけられて創設された。群島開発の初期段階で、開発が遅れていた東の島々に目をつけた教授は、企業(大規模百貨店等の食料部門)に話をつけ、安価な肉・野菜の直営農場の開発・提携のための資金の名目で農工学科の開設資金を引きだした。これにより、群島東は群島西と異なり、白葉教授による民間資本主導型の開発が行われる事となった。が、これだけの開発が一個人の力のみでなされるはずもなく、都の力が相応に関わっているのは間違いなかろう。
農工学科の建物の外観は木造建築ばかりだが、実はその中身は全て鉄筋コンクリートである。これは教授の骨董趣味による。農場を背景とする広い敷地に、これらの建物が散在し、昔の北大のキャンパスを忍ばせるような風情を再現している。この影響で「群島東ファッション」と呼ばれる明治初期を思わせるファッションでポプラ並木を歩くのが若いカップルの間での流行となっている。現在、家畜の品種改良、ブロイラー種の強化開発が行われている。また、閉鎖環境における畜産(農業心理研のバイオスフィア研究協力)についての研究も進められている。
初出/Network−GL