エピローグ&エンディング
……群島を1ヶ月にわたって騒がせた『ベビー・クライシス』事件は、こうして突然の幕
切れを迎えた。
この事件については、通常国会の参議院厚生委員会で審議される予定だったが、白
葉、三宅両教授とアーキペラゴ・ステーションの根戸安香らの裏工作によって、うや
むやの内に不問となった。
新聞・雑誌なども、事件の中心となっていた赤ん坊が消滅したことにより「この事
件はデマだった」と判断し、近日掲載予定だった特集記事などは全て没となった。わ
ずかに、広川庵人の記事が一部ゴシップ誌に掲載されたが、掲載誌の品格が、記事の
信憑性を失わせた。
この事件が一体誰の仕業だったのか、ほとんどの人間は知ることがなかった。知っ
ている者も、真相については固く口を閉ざすばかりであった。
しかし、赤ん坊がいなくなっても、群島の住民は忘れることがないであろう。育児
の苦労を。そして、赤ん坊へ自らが注いだ愛情を……。
白葉透教授……金居教授の片棒を担いだ植物遺伝子研究室を廃止。学生は農工科
の各研究室へ編入させたが、室長の工藤 実助教授(39歳)を
解任、農工科から放逐した。現在、子供を失い落胆している中嶋
千尋をどう慰めるかで、頭を悩ませている。
三宅準一郎教授…MIL特製カプセル型自動保育器もどき『ゆりかごくん・はいぱー
X』を、貸与先のワールド・ワイド・リース(WWL)から回収
する。現在、本物の自動保育器『ゆりかごくん』の製作に、意欲
的に取り組んでいる。
金居裕三教授……赤ん坊の世話を長女の祐子に任せ、海外に逃亡した。表向きの理
由は「学会への出席」となっているが、ほとぼりが覚めたと判断
したら、再び群島に戻ってくるであろう。しかしその時、彼が第
2の赤ん坊と人参果を群島にもたらさないとは、誰が断言できる
であろうか?
『ベビー・クライシス』
CAST |
…………『ベビー・クライシス』は、終結した。
しかし、一部の人達の間では……
「……うちの赤ん坊は、首が取れないねぇ」
「う、うれしいことはうれしいんだけど、これだけ育児が大変だとどうも……(^^;)」
「妊娠3ヶ月です」
「……え゛?(・_・;)」
群島各地で、新たな『ベビー・クライシス』が始まる……。
配給
グローバルデータ通信
〈 了 〉