エピローグ:井上教授の日記より
『さて、こうして公営住宅A棟は無惨にも滅び去る結果となった。これは悲しむべき
出来事だったが、これには後日談もある。
まず、弥生家についてだが。
家庭裁判所にまで問題はもつれ込んだが、なんとか保護観察処分ということで話が
ついた。これは事実上の勝利というべきだろう。
ただし、弥生家の公営住宅縁島団地F棟への転居については、やはり拒絶された。
いくら証拠物件が綺麗に崩れさっているといっても、さすがにこれを覆すことは私に
は出来なかった。
白葉教授は引っ越すそうだ。
取りあえず農業工学科に近い利尻島に、ちょうどいい一戸建て見つけたらしい。
白葉教授に、弥生家の連中がリヤカーに荷物を積んだまま路頭に迷っていることを
話すと、『青果市場の倉庫が余っているから、彼らに貸そうか』といっていた。これ
で弥生家はなんとか年を越せそうな感じである。
水原遥くんとは最近、群島中央駅で会った。
無事に仕事を終えたことで自信もついたのか、初めて会った時よりハキハキとした
印象を受ける。近ごろは仕事も増えて、意欲的に毎日を暮らしているらしい。
そういえば。
無茶な取材をしていたAS特別取材班。あれは一応おとがめなし……と、いうこと
で肩がついたらしい。
形はどうあれ、一番切迫した映像を放送していたのはASだった。
追記:どうでもいいことだが。
最近、公園を散歩をしていてジーラ・ナサティーンくんを見かけた。
少しやつれたんじゃないかね? と、声をかけたら、彼女は『迷子の小犬
を捜して、C棟の蛍光灯を取り替え、戻ってこない回覧板を捜しにいかな
ければならないのよ』と力なげにつぶやいていた。
彼女のように地域福祉に尽くす人は、本当に素晴らしいと思う。
なお、余談だが……我が家の今夜の食事は、なんとすき焼きと決まった。 』
〜民事事件に携わること30年。
井上光政氏の日記より抜粋〜
■CAST |
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井上光政 水原遥 紫沢俊 逢水秋人 ヨハネ(ヘビ) 梅津功一 |
弥生葉月 弥生五月
多田京子 シータ・ラム 富吉直行
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■資料提供 |
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■STAFF 監督 演技指導 資料提供 時代考証 Special Thanks
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■協力 警視庁
■原作/執筆 氷原 公魚
■配給 NETWORK−GL
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《 完 》