「魚の脳みそって旨いですよね……」
「――浩二さん」
杜沢が声をかけたのは、アマゾンでの魚釣りの話から火乃が魚料理の話題を持ちかけたときだった。
「……杜沢さん、お久しぶりです」
「叔母から、浩二さんがこちらにいらっしゃると聞いたもので、ご挨拶にと思って」
「叔母……?」
浩二は立ち上がり、出がけにコンビニエンスストアで買ってきた紙コップをひとつ取り出してウーロン茶を注ぎ、杜沢に差し出した。
「あれ……何も言ってませんでしたか? るるいえ海底開発のマイア・I・リークは私の叔母なんです」
「……そうだったんですか。なんか、どっかでお会いした事あるような気がしてたんです。そうですか、杜沢さんの叔母さんだったんですか」
浩二は驚いたように言った。
だが、そう考えてみれば合点の行く事もある。マイアがどこで自分の事を知ったのか、浩二はずっと不思議に思っていたのだ。
「じゃあ……杜沢さんがマイアさんにぼくの事を……?」
「叔母はあの通り、海の事しか頭にない人間ですからね。以前からこの群島には興味を持っていたようだし、海底開発の話を最初にしたときから水族館を併設したいという話はしていましたから……」
「そうだったんですか。道理で初対面の割にぼくの事を良くご存知だったはずだ。えーと、ああ、こちらの彼は火乃くんと言って、洋上大学の大学院生をしてらっしゃるんです。魚の病気や水質管理コンピューターの調整をこの水産試験場でしていて……ぼくもお会いするのは今日が始めてなんですが、水族館を作ったら、ぜひ彼にも協力してもらおうと今勧誘していたところなんです」
そう言って、浩二は照れたような笑いを作った。
その表情は初めてこの水槽の前で杜沢と出会い、DGSの社長人事への介入に利用されているのだとこぼしたときとは、まるで違うものだった。
「初めまして。マイアさんにはいつもお世話になっています」
浩二に紹介され、火乃は杜沢に握手を求めた。
「……挨拶って、そのことですか。杜沢さんも海底開発のチームに加わる事に?」
「いえ……」
そう言って、杜沢は口ごもった。
受け取ったウーロン茶で唇を濡らし、浩二の顔を見つめる。
「――今日は、お別れを言いに来たんです」
「お別れ?」
「ええ」
「どちらへいらっしゃるんです?」
「アフリカへ……」
「遺跡調査に……という訳ではなさそうですね。いったい何があったんですか?」
「過去と決別するために……行くんです」
杜沢の表情は険しいものに変わっていた。
彼もまた……自分がDGSとの戦いを決意したときのように、何かを乗り越えようとしているのだと浩二には感じられた。
「帰っていらっしゃるんでしょう? またここに、帰っていらっしゃいますよね?」
「その積もりです」
杜沢は、表情を隠すようにうつむいてそう呟いた。
だがそう答えながら……杜沢は自分自身の中にある不安を、打ち消す事はできずにいた。
もう、帰ってくる事はできないのではないか……。
そんな思いが心のどこかにはある。
だからこうして浩二のもとを訪れたのだ。
杜沢が守りたいと思った浩二の夢……佐々木義一が辰樹のあとを継ぎ、社長の座についた事で、浩二は「水族館の館長さんになりたい」という自らの夢に一歩を踏み出している。その姿を一目見てから旅立ちたかった。
そして辰樹が白葉という助け手を得たように……浩二もマイアと出会う事でその一歩を着実なものとする事ができた。
(それで……満足なんだ)
(それを見届けたから……旅立つ事を決意する事ができたんだ)
言葉にはならない思いが、杜沢の中に木霊のように今も響いていた。
「いつ出発なさるんです?」
「今日――午後の便にキャンセルがあってチケットが手に入ったので、すぐに出発します」
「私の妹――真奈美をご存知でしょう?」
「ええ。彼女も私と同じように隠密として坂井さんのところに出入りしていましたから。真奈美ちゃんが……まさか辰樹社長の娘さんだとは思いませんでしたが……」
「明日……月曜日に結婚するって言うんです。やはり隠密として兄に協力して下さった中川さんという人材派遣会社の社長さんと。……それはご存知で?」
「電話をもらいました。ぜひパーティに出席してくれと……」
「それでも、行ってしまわれるんですか?」
「……チケットを無駄にはできませんよ」
「もう彼女には……いえ、坂井さんや仲間の方たちにはそのことを話されてるんでしょう?」
「いいえ……。何も言わずに行くつもりです。大げさに見送られるんて……柄じゃありません」
「せめて……結婚式には。彼女もきっとあなたの出席を望んでいるはずだ」
だが、その浩二の言葉に杜沢は首を振った。
「今夜、真奈美と中川さんが兄と話をすると言って……私も一緒に夕食を取ることになっています。せめてそのときに……」
「半年だけです。……半年経ったら帰ってきますよ。そのときは真奈美ちゃんは、もうすっかり奥さんが板についているかも知れませんね。アフリカのみやげを結婚祝いの代わりに贈るからと、二人にそう伝えて下さい」
そう言って、杜沢は身を翻した。
整然と並べられた水槽の間を、ゆっくりとした歩調で歩いていく。
その杜沢の後ろ姿を見送りながら……浩二は杜沢の意識の奥底にある不安の種を見抜いていた。
彼は……もうここに戻ってこないのだと予感している。
「あなたの席を用意して……お待ちしてます。ほんの十分、いえ、顔を見せてくれるだけでもいい。真奈美の兄として、お願いします」
その浩二の言葉にさえ、杜沢は振り返らなかった。
彼の背中を……浩二はただじっと、水産試験場から出て行くまで見送っていた。
(そんなもんが俺に似合うわきゃあねえだろぉっ!)
……その怒号を、真砂美相手に発することだけは、中川は思いとどまった。
結婚を目前に生命を落とすような真似はしたくない。
中川を殺すのに刃物は不要なのだ。ただ酒が一升あれば事足りる。
明日の予行演習だと思って、せいぜい坂井に笑われるつもりでこの「こうじや」を訪れたのだ。
「それで……分かりましたか?」
中川の危惧していた「大爆笑」は、結局発せられないままに終わった。
いや、坂井も同情したくなるほど、中川の表情が緊張に引きつっていただけのことなのだが……。
「ああ。あんたの言ってた通り、湘南モノレールの江ノ島駅の近くに森沢干物店ってのがあった。香南そっくりのおばちゃんが鯵の干物売ってたけど、店内に北海の珍味は見たらなかったな。近所のおねーちゃんの話じゃ、今年の三月くらいまでは香南家にいたらしいぜ。高校に入学も決まってたらしい」
「家出娘……ですか、やっぱり」
坂井はため息をついた。
ようやく真奈美の家出騒動に蹴りがついたと思ったら、すぐに次が控えている。
「親父は勘当したっていきまいてるって……ご近所じゃ一応そういう形になってるらしいぜ。まあ……あれだな、売り言葉に買い言葉の親子喧嘩ってやつ」
「困ったもんです」
「それと……もう一つ別件で、これは噂だからどこまで信用できるか分からねえけど、軍事学部で、マイヤー助教授が森沢香南と同棲するとか、やっちゃったとか」
さらりと言ってのける中川に、坂井はふらりとめまいを覚えた。
「………………ど、ど、ど、ど、ど、ど」
「落ちつけよ、噂だって言ったろ? これだから清い生活送ってる爺いはよ。いちいち反応が大げさなんだから……。あんまりため込むと身体に悪いぜ」
「冗談言ってる場合ですか」
「俺はいつだって本気だよ」
「信憑性の方はどうなんです。噂は尾ヒレがつくものですが、また同時に火のないところに煙は立たないと言いますからね」
「さぁー、俺、まーちゃんのことはあんま知らないからね。ただアーマスの話とか、軍事学部での噂とか聞いてると……そういうタイプじゃないんだよなあ。香南が一方的に熱上げてるだけで向こうは迷惑してるって感じもするし……。第一香南見て欲情するとも思えないしさ。ロリコンとかってんならともかく」
「それについてはあなただって同罪でしょう」
すかさず坂井が突っ込んだ。
「今は香南の話だろおっ! しまいにゃあぶち殺すぞ、このくそ爺い」
「まあまあ、そういきり立たずに……」
「真奈美のトコにかかってきた香南からの電話によると、どうもアパート借りたらしいんだよな。で、洋上高校に編入するみたいなことも言ってるっていうし……。ただ、香南の貧乏ぶりでそんな余裕があるとは思えないしな。だとすると銭の出所はほぼ限定されてくるだろ? アーマスは香南がアパート借りたことも知らないって言うし」
坂井ががっくりと頭を垂れたとき、表の扉ががらりと開く音が聞こえた。
「……あ、いらっしゃい。お味噌で」
印半纏をひっかけて土間へ降りようとした坂井の表情が凍り付いた。
暗い店内に身を屈めるようにして入ってきたのは……噂の張本人――ハインリヒ・フォン・マイヤーだったからだ。
「……げ」
立ちすくんでいる坂井を見て、それから入ってきた客の方へ視線を投げた瞬間、中川の口から洩れたのはその一言だった。
「…………」
「…………」
「…………ケホケホ」
三人は卓袱台を挟んで無言で見つめ合った。
中川が何か会話を促すようにと発した咳払いで、ただでさえうざったい室内の空気が一層気まずさを増した。
「分かりました。つまりあなたは香南が高校に入学するための援助をすると、そういう訳ですね? それではもうひとつ単刀直入にお聞きします。マイヤーさん、香南に手をつけたっていう噂は本当なんですか」
「………………つけているはずがないだろう」
怒声を押し殺しているのが分かった。
「じゃ、同棲説の方は?」
中川はマイヤーの顔をおそるおそるのぞき込んでそう尋ねた。暴れられてはたまらない。結婚式を明日に控えた身で、ようやく痛みの引いてきた肋を折るような真似はしたくなかった。
「三畳一間で同棲できる体格に見えるか」
「はははは……なるほど」
「……」
「……」
「こうじや」奥の四畳半は……またしても気まずい沈黙に包まれた。
そして今回もやはり、その気まずい沈黙に終止符を打ったのは真奈美だった。
「坂井さーん、克ちゃん来てますかぁー?」
そう言って、真奈美は返事も待たずに上がり込んでくる。
こういう、似なくてもいいところはしっかり中川に似てくるのが……真奈美にしろアーマスにしろ香南にしろ……坂井の頭痛の種である。
「あー、いたいた。美容院行ってすぐ帰って来るって言ってたのに、こんなところで油売って。早くしないとお兄さんとの約束に間に合わないじゃない」
もちろん真奈美は、義一と引き合わせてもらうために、中川が香南の身元調査をしていた事などまったく知らない。相変わらず遊び歩いているのだと勘違いしているのだ。
そして真奈美は、四畳半をとりまく不穏な空気にも、まったく気付いてはいなかった。
(……もしかしてコイツ、鈍いんじゃねえか?)
と、中川をしてそう思わせるほどの無関心ぶりだった。
「あー、まーちゃんだ。あっちこっち電話したのに、ちっとも捕まらないから困ってたんですよー。明日、あたしと克ちゃんの結婚披露パーティやるんです。絶っっっっ対っっ!来て下さいね、香南と一緒に(^_^)」
「………………あ、ああ」
その真奈美の誘いに、マイヤーがちょっと臆したようにも見えた。
「……もしかして、まーちゃんって、女苦手?」
「……………………ウッ」
中川にいきなり図星をつかれて、マイヤーは押し黙った。
「なんだ、……それなら安心してお任せできますね」
熱い茶をすすりながら、坂井がそれまでの渋い顔を崩してにやにやと笑った。
所詮こいつらは、香南の仲間なのである。
「まーちゃん」という呼称が固定してしまうだろう事は、すでに疑う余地もない。
「杜沢さんが来てくれるかも知れない……」
という期待で用意させたものだが、その五人用のテーブルを見たそれぞれの反応はまったく別のものだった。
(坂井は遅いな)
(……あそこにお父さんが座っているつもりになれって、そういうことね? 浩二お兄さん)
(もしかして、あのハイパー母ちゃんも来るのか?)
言うまでもなく上から順に義一、真奈美、中川の思いである。
そして浩二は、食事の間もずっと杜沢が来てくれるかも知れないと言う一縷の望みを抱いてドアの方に始終目をやっていた。
「奈美、ずっとお兄さんやお姉さんが……年上の兄弟が欲しいなって思ってたの。こんな風に会えるなんて、全然思ってなかったから、とっても嬉しい」
真奈美がはにかむように義一と浩二を見つめて言った。
二人は、真奈美のとなりに座る中川とは違い、仕立てのスーツをびしっと着こなしている。
……育ちの違いは歴然である。
「肋を折ったと聞いたが、身体の方はもういいのか、中川くん……いや、克巳くんと呼んだ方がいいのかもしれんな」
「え、ええ、まあ。大した怪我じゃありませんから」
すでに義一は花嫁の父という風格である。
しかも……中川にとってお得意様の社長でもある。その緊張から、食べているものの味さえ分からなかった。
「率直に言わせてもらえば、結婚には……私はあまり賛成ではない。真奈美はまだそういう事を考えるには若すぎるはずだ。だが、真砂美さんが結婚に乗り気だという以上、私が差し出口を聞く必要はないだろう。――克巳くん、くれぐれも真奈美の事をよろしく頼む。私や浩二がパーティに出席すればいろいろと面倒も起こるだろうから、明日は遠慮させて頂くが、良いパーティになることを願っている」
「兄さん、何もそんな堅苦しい事を言わなくても……。克巳くん、あまり気にしないで。真奈美、ぼくたちはいつでも君の事を応援している。困った事があったら何でも相談に来て欲しいな。……兄弟なんだから」
義一の言葉に気圧されるように小さくなっている中川を、さすがに可哀想に思ったのか浩二がそう助け船を出した。
「パーティ……来てもらえないんですか、ちょっと残念。マイヤーさんや香南も来るのに……」
「ああ、香南と言えば、彼女の傷の具合はどうなんだね? 病院に問い合わせたら、入院中に姿をくらまして以後行方不明だと言われたんだが……」
義一はそう言って、中川の方に目をやった。
だが、答えたのは真奈美の方だった。
「香南なら、今はアパート借りてひとり暮らし始めてます。マイヤーさんがいろいろ骨を折ってくれたって、大喜びしてました。香南とマイヤーさんも上手く行くといいのにね、ねえ、克ちゃん?」
「あ……ああ、そうだな」
絶対に無理だ、と中川は思う。
「あの」マイヤーと「あの」香南で接点があるとすれば、かたや「戦闘のプロ」、かたや「銭湯のプロ」というくらいのものだ。
……そうは思ったが、義一を前におちゃらけを言うほどの余裕は中川にはない。
「マイヤーと……香南………………?」
義一は眉を寄せた。
マイヤーの「戦闘のプロ」としての一面だけしか知らない義一にとって、それはあまりにも奇異な組み合わせだった。
第一、年齢的に考えても親子ほど離れていると言っても言い過ぎではないような二人なのだ。
「水族館ができたら、招待状を送るよ。みんなで遊びに来てくれ。……それまでにシュメルに芸を仕込んで置くから」
食後のコーヒーを飲み終わり、席を立った中川と真奈美に浩二はそう言って笑いかけた。
「今日はごちそうさま、お兄さん。……また会いましょ。今度はお母さんや真由美も一緒にね」
そう言って、真奈美はすでに出口の方へ歩き始めている中川の方へ、小走りに駆け寄った。
(結局、来なかったか……杜沢さん)
「思い出すな……」
店を出ていく中川と真奈美を見送っている浩二に、義一はぼそりとそう呟いた。
「何を?」
「お前が初めて家に連れてこられた日をさ……」
そう言って義一は目を細め、口元に小さく笑いを浮かべた。
五歳の時、母親が病死して頼るものを失った浩二は……母親の遠縁にあたる一家に二ヶ月ほど預けられたあと、辰樹に連れられて初めて義一の前に現れた。
『お前の弟の浩二だ』
あの時、浩二は死に別れた母親が買ってくれたのだと言う小さな金魚の入ったプラスチックのケースを大切そうに抱えて、一言もしゃべらず、無表情に義一を見上げた。
『お前の金魚、可愛いな。もっと大きな水槽に入れて、泳ぐところを一緒に見よう』
それが……初めて弟に投げかけた、義一の言葉だった。
「あー、腹減った」
レストランを出てタクシーを拾った途端、中川は長いため息と共にそう言葉をもらした。
「……たった今、おフランス料理のフルコース食べたばっかりなのにー」
「何食ったかなんて覚えちゃいねーよ」
バックシートにどっと背をもたせかけてネクタイを解き、もう一度ため息をもらす。
「くすっ、がっちがちに緊張してたもん、克ちゃんてば。義一お兄さん、そんなに恐かった?」
「バカヤロー、ああいう場面ではなあ、男は緊張するものと相場が決まってるんだ。一生に何度かしかない正念場だぞ。あそこで緊張しないで、いつ緊張するっていうんだ」
「克ちゃんって無神経そうに見えて結構、ナイーブなんだから。これからは真奈美がしっかり守って上げるからね☆」
「………………言ってろ」
何となく、マイヤーが香南にどういう扱いを受けているのか分かったような気もする中川だった。
(奴さんも気の毒に……)
「でも、嬉しかったなぁ、お兄さんたちと一緒に食事できるなんて。坂井のおじさんに感謝しなくっちゃ」
「……俺にもしてね」
「……なんで?」
「おっさんにもの頼むのって大変なの」
「そっかー。うんうん、克ちゃんにも感謝っ!」
「結婚式が済んだら……」
そう言って、中川は真奈美の肩に手を回し、その身体を抱き寄せた。
それまではしゃいでいた真奈美が、中川のその行動に驚いて一瞬、身体を堅くした。その腕の力にあらがうようにして、そっと中川の顔を見上げる。
照れたような……そんな表情だった。
「――辰樹さんの墓参りにでも行くか」
「……うん」
中川の身体に頬を押しつけるようにして、真奈美は小さく頷いた。
「ありがとう、克ちゃん」
7月20日、午前10時30分。
やつれ切ったアーマス・グレブリーはその消え入りそうな声と共に部長に最後のファイルを届けた。
すでに何時間起き続けているのか、自分でも分からないほどの疲労ぶりだった。
「おい、あいつ大丈夫だと思うか?」
「……今日結婚式に出るとか言ってなかったっけ」
「病院に行った方がいいと思うけどな、俺は」
などと同僚の語り合っている言葉も、すでに耳には届いていない。とにかくこれで中川と真奈美の結婚式に出席できる。
アーマスの頭の中にあったのはそれだけだった。
これから家に戻ってシャワーでも浴びて、服を着替えて――ワイシャツは確かクリーニングから帰ってきているのがあるはずだ――バイクでぶっ飛ばせば何とか遅刻せずに済む。問題はバイクでぶっ飛ばせるかどうかと言う、その一点にかかっていた。
「ご……ご苦労だったな、グレブリー」
部長も……まさかアーマスが本当に仕事を上げるとは思ってもいなかった。
「あいつ、使えねえ使えねえって言われてきたけど、追いつめれば頑張るじゃないか。結構根性もあるし……。吉沢派遣に電話して契約更新して置こう」
アーマスがよろよろと出て行くのを見送りながら、部長はすぐ脇にいた係長にそう耳打ちした。
「そうですね、浩二副社長の例の井戸掘りプロジェクトにはどうしても英語の達者な人間が必要です。日常会話のできる者なら他にもおりますが、英語で仕事の話もできるプログラマーとなると……やはり……。まさか部長に行って頂く訳には行きませんし、高沢くんはお母さんが入院中、三木くんは先月アメリカから戻ったばかりで、すぐに次の任地へ送るという訳には行きませんからな」
係長が、揉み手すり手で部長に相づちをうち、細い髭を撫でつけた。
だが、背後で彼らがそんな相談をしているなどということに、アーマスが気付いたはずはない。
井戸掘りプロジェクト……とは、エジプトの緑化計画プラントの建設事業である。乱開発でのし上がってきた佐々木建設が「環境保護に取り組む企業へ」成長して行こうとするその一歩として浩二が、そして西崎が推し続けてきたプロジェクトである。
「じゃあ、グレちゃんには暑い夏休みをプレゼントするか、頑張ったご褒美に」
アーマスがそのときの部長の顔を見ていれば、
(坂井さんに似ている……)
と思ったかも知れない。
そんな笑顔を部長は浮かべていた。
途中、赤信号でバイクにまたがったまま眠るというハプニングが二、三回……いや、四、五回か……ひょっとしたら六、七回あったが、アーマスは何とか無事にパーティ会場であるSNSにたどり着く事ができた。
アーマスが到着したとき、すでにパーティは始まっていた。
「…………救急車を呼ぶか?」
パーティ会場に入ってきたアーマスを一目見て、中川が思わずそうもらした。そう言わずにはいられない危機迫る表情だった。顔は青ざめ、目の下にはくっきりとクマができている。
「グレちゃ――ん、お仕事終わった?」
純白のウェディングドレスに身を包んだ真奈美が、アーマスを見つけて走ってくる。
……走ると言っても、大きく広がったドレスの裾を持ち上げ、人の波をかき分けてくるのは並大抵のことではない。
しかも、ヘッドドレスから長く垂れ下がったベールを持つ役が香南だから、危なっかしいことこの上ない。
「…………元気な花嫁だな」
アーマスはそう言って笑顔を作った。
たった二日で、サイズ合わせもしないで選んだとは思えないほど、ドレスは真奈美に似合っていた。
ウェディングドレスを着た初々しい十六歳の花嫁に、中川の視線が釘付けになっているのを見るのは……アーマスにとっても意外なことだった。
「きれいだな」
「でしょ?」
アーマスの言葉に、真奈美はにこっと笑う。
「真奈美ちゃん急に方向転換するの反則だよ――」
途中、何度か転びそうになりながらもベールを持って追いかけてきた香南が、ため息をついてその場にへたりこんだ。
ショートパンツに新しいキリン柄のシャツ、そして額の特大絆創膏もよそ行きの蛍光オレンジである(赤い油性のマジックで「まーちゃん命」の文字が書かれている)。
やはり仕事を抜け出して、服の準備をしてやるべきだったと、アーマスは思った。
パーティの出席者は中川や真奈美にも……いや、ひょっとするとパーティの幹事となっている三日月迅にさえ覚えきれないほど多数に上った。
アーマス・グレブリー、森沢香南、坂井俊介、広川庵人……このあたりまではまあいい。
真奈美の母親の真砂美と、妹の真由美。これも問題はない。
洋上高校のクラスメイトに吉沢派遣の社長――これも、ごく当然と言える招待客である。
キャノンボールレースの準備を抜け出して現れたシータ・ラムと聖武士も、まあ呼ばれても不思議はない顔ぶれである。
その聖の横で、野村明彦がまだ自分のおかれた状況を把握できずに狼狽している。
さらに、大挙して押し寄せ、パーティに乱入したオフィコン軍団。……この辺から、雲行きが怪しくなってくる。
「……何で呼んだんだ、騒動を起こすだけじゃないか」
「呼んでないのに来ちゃったんだってば。おねーさんたち、お祭好きなんだもん、こんなイベント見逃す分けないじゃない」
彼女たちの勢いは、主役であるはずの中川と真奈美を圧倒するには十分すぎるものだった。
すでにディスコと化したSNSのラウンジには、踊り狂うオフィコンでごった返している。
だが……それもまあ、大した問題ではないのかも知れない。
問題はオフィコンと一緒に喜々として踊っている三宅教授や、一升瓶を山ほど担いで部下(講座の学生である)を引き連れて現れた白葉教授。なぜか一家総出で現れたジーラを初めとするナサディーン軍団などなど……の方である。
他にも……名前さえ分からない客の姿が山のようにあった。パーティに居合わせた客の中に、パーティの主旨を理解していない人間がいたとしても何の不思議もないだろう。
だが、それだけ無関係の人間が溢れ返っている中で、れっきとした招待客であるにも関わらず姿を現していない者もいた。
杜沢跡見。
ハインリヒ・フォン・マイヤー。
そしてチャン・リン・シャンである。
「……………………何で名刺屋の名前が出てくるんだ」
「え? だって克ちゃんと仲良しじゃない」
「勘弁してよ」
そしてまた、本来なら必ず顔を出すべき面子でありながら……招待客のリストにさえ上っていない人物もまたいた。
中川の、両親である。
「何で呼ばなかったの?」
「一応声はかけたけど、お袋が『その日はおとーさんと一緒に温泉に行くからダメ』 って言うからさ」
「一人息子の結婚式なのに?」
「俺の親に常識を求めるな」
「あれ、じゃあ、あの人は? ……えーと、『自称/初老のもと作家』の叔母さん」
「あいつは『なんであたしが克巳の結婚式に出なくちゃ行けないの』その一言で断られた。……自分が結婚式しなかったからってひがんでるんだよ」
実は単に面倒だったと言うハナシもある……(^^;)。
その言葉に、中川は振り返った。
いや……つい振り返ってしまった、と言った方がいいのかも知れない。
そして振り返ったことを嵐のように後悔した。
(な……なぜあの女がここにいる……っ!)
『スパイをやるにはそれなりの恵まれた容姿っていうかぁ……』
という……かつて幾度となく浴びせかけられたあの台詞が鮮やかに蘇った。決して記憶力のいい方ではないのに、こういう……思い出したくもない記憶だけはいやってほど鮮明に蘇ってくるのが、中川の悩みの種だった。
そう……そこに立っていたのは紛れもなく、チビで小太り、脂性というあの途方もないブスだったのだ。さすが結婚式という晴の舞台をよく理解しているらしく、太った身体に食い込むチャイナの派手さも一筋縄ではない。
光沢のある真紅の地に金糸とスパンコールで唐獅子牡丹が縫いとられたすさまじいセンス。そして孔雀の羽根の扇子をばっさばっさと脂っぽい顔を扇ぐ。
「………………」
「…………克ちゃんの友達?」
「やめろ」
思わず真奈美もたじろぐ醜悪さだった。
そして彼女の持ってきたメッセージカードには、
『ウェディングドレス来て遊びに行こうと思ったけど、仕事が入ったのでこのくらいで我慢しときます。ぜひとも初夜のビデオを撮ってDGS・秘書課まで送ってね☆
親愛なる真奈美ちゃん&克巳ちゃんへ………………チャン』
という文字が書かれていた。
「……………………名刺屋ぁぁぁぁぁぁっ! ぶち殺してやるっっっ!」
メッセージカードを握りつぶして激高する中川の横でもらされた、
「きゃ☆ チャンさんたらHなんだからぁ」
という真奈美の言葉は、中川には聞こえてはいなかった。
「落ちつけって、社長」
必死に中川を押さえるアーマス。
そしてその横では香南が、うらやましそうにそのチャイナドレスを見つめていた。
「いい柄だなあ」
…………どこまでもマイペースな奴らである。
二次会は近所の居酒屋に河岸を変えて行われた。
オフィコン軍団は踊り疲れてあらかた退散していたが、新手の正体不明の非招待客が現れたため、人員はレポート用紙三枚に及んだリストのそれを大幅に超えた。
お色直しで真奈美はイブニングドレスに、中川は黒のタキシードに着替えたが、畳敷きの居酒屋にはまったく似合わなかった。
バラの花束を抱えてマイヤーが顔を出したのもこの居酒屋で、だった。
「結婚おめでとう、お幸せに」
というその台詞をドイツ語で言い、立ち去る。
恐らく照れたためだと思われる。だが、中川にも真奈美にも、もちろんドイツ語は分からなかった。
アーマスは連日の徹夜続きでついにダウン。オフィコンの「幸子」の膝枕でずっと眠っていた。
真奈美の投げた「花嫁のブーケ」は香南の額を直撃。傷口が開いて出血し、一時は救急車を呼ぶほどの大騒動となるが、三宅教授の「自動止血装置」によって事なきを得た。再び病院通いが決定したが、とりあえず宴会には支障のない程度の傷である。
そして……店を出るときまで誰も、坂井俊介の姿がない事には気付かなかった。
三次会は客の数をぐっと減らし、主賓ふたりの他、アーマス、香南、聖、アインシュタイン、白葉教授と中嶋千尋、三宅教授という面子でビアホールへ。
中川と真奈美は盛装を脱いで「がんがん飲みましょ体勢」に突入。
はぐれて辺りをうろついていた坂井が合流。
中川が飲んだ勢いで他の客と乱闘した他には、とりたてて問題は起こらなかった。アーマスはビアホールでもうつらうつらしていた。
四次会、白葉宅。
聖は肋が痛むと言って脱落。代わりにSNSのパーティにも姿を現していた農業工学科の学生たちが出席。
香南の北海の珍味をつまみに『夜明け前』を飲みまくる。
中川が白葉の秘書に言い寄っているところを見つかり、真奈美につねられる。
五次会、香南の新居。
メンバーは中川、真奈美、アーマス、香南、坂井、アインシュタイン。
みんなでビールを飲みながら飯盒でご飯を炊く。
キャンプファイヤーをやりたいという香南と真奈美の意見は却下され、しかたなくアーマスの買ってきた花火を上げる。
ビールで上機嫌になった中川が火のついた爆竹を握りしめて団地内を徘徊し、管理人に叱られる。
六次会、花見のできる丘公園。
メンバーは五次会と変わらず。
花火の勢いでここまで遠征。かくれんぼをして酔いが回る。すでにしっかりと夜が明けていた。
七次会、開店準備中の『味の屋』。
メンバーは五次会、六次会と同じ。
「……七次会じゃなくて、朝ご飯でしょ」
と紀美枝に指摘される。開店前であったにも関わらず、焼き魚定食を用意してもらう。
朝ご飯を食べながら、香南がダウン。続いて真奈美もダウンし、奈緒美の部屋を借りて就寝。
アーマスは酒臭い息のまま会社へ向かった。
八次会。「こうじや」。……中川と坂井。
すでに宴会という雰囲気はかけらも残っていなかった。
チャン・リン・シャンの期待していた「初夜」はこうしてどこまでも健全に明けてしまった。
「……なんか、いっそう貧乏ったらしくなったんじゃないか? 新しいの買えよ。義一の旦那から金もらったんだろう?」
中川は腰を降ろし、テレビのスイッチを入れた。
ちょうどワイドショーの時間だった。昨日昼過ぎから行われた佐々木建設新社長就任記者会見の様子を流している。
株暴落や、DGSのパーティでの椎摩渚発言、ジャパンタイムのスクープ記事の時と比べればその扱いは小さなものだったが、依然として世論が佐々木建設の社長人事に深い関心を寄せているのだと言う事が分かる。
『佐々木建設は、これからも宇宙進出への準備を進めて行く方針です。今後、宇宙開発への具体的な構想をスタートさせるために菱島駿河重工との提携プロジェクトも進行しつつあります。その上で、佐々木建設は環境保護に根ざした事業に対しても一層の努力を続けます。人工群島区19号埋め立て地再開発における低公害型都市構想、現在エジプトで進行中の緑化計画プラントの建設など、バイオスフィア計画だけでなくさらに多くの事業展開を模索しています』
記者会見での義一の発言の映像が流される。
そして、義一の言葉は、記者の質問に答える形で辰樹の事故死、西崎の失踪にも及んだ。
『企業という組織にとって、これらは大きな障害であります。全力を尽くして乗り越えなければならない障害だと思っています。前社長・佐々木辰樹の事故死が社に与えたダメージは大きなものであり、また現在も失踪中の西崎副社長の存在もまた、社にとって欠くことのできない重要なものであったと思います。しかし、振り返って足踏みしていることでは何も解決はしません。宇宙開発の分野で、そして環境保護事業の分野で、より多くの、形ある成果を作り出す事が、私にできる最善の方法であると考えます。事件はすべて警察にお任せしています。もちろん、企業としてできる限りの協力は惜しみませんが……』
義一がそうした言葉を発した裏には、ジャーナリストである広川庵人の言葉があった。
真奈美と中川の結婚式が終わったあと、広川は佐々木建設社長室の義一とヴィジホンで短い通話を交わしたのだ。
『社長の座を手に入れるために、西崎や高槻と言った男の血が流された事を、あんたは忘れるべきではないはずだ。夢を見るのは結構なことだ。だが、その犠牲となった者たちへの責任を……あんたは果たさなければならない。ジャパンタイムのスクープは失敗に終わった。俺は、今回は敗北したんだ。だが……まだギブアップはしていない。今は引いても、いずれまた、あんたを追うことになるだろう』
広川に言われるまでもなく、それは義一には分かっていた事だった。
もう佐々木建設には、辰樹の野心の下で泥をかぶってきた西崎はいない。今度は義一が泥をかぶり……そのぬかるみを踏み越えて宇宙を目指す番なのだ。
それは決してたやすい事ではない。
テレビに映った義一の表情には、その確固たる意志が見えていた。
「義一の旦那もめでたく社長に就任か……」
「……これで私も肩の荷が降りましたよ」
坂井はそう言って、中川に茶を勧めた。
「今回の功績で、隠密として見直されたんじゃないのか? 忙しくなるんだろ」
香南のスポーツバッグから持ち出してきたイカの薫製をかじりながら、中川は坂井の顔を見つめた。
何もかも終わって……安堵したように見えるその表情は、坂井の年齢を感じさせるものだった。
「私の仕事は、もう終わりましたよ」
「終わったって……?」
「私の隠密としての使命はすでに終わったんです。今回の事で、私の存在は各方面に知られてしまいましたからね。決して表面上に現れる事はなくとも、隠密が隠密である事を知られれば……すでに隠密としての価値を失ってしまうんです。辰樹の野心を叶えるために一度だけ腰を上げる……それが、佐々木建設を辞めるときの条件だったんです」
「たった一度……そのためにあんた、二十年も貧乏生活してきたのか?」
「言ったでしょう、中川さん。私はね、この生活に何の不満もないんです。でも――心はいつだって純な少年の時と同じように冒険を求めてやまなかった。一生に一度、たった一度だけでいい、好きな映画の主人公がそうであったように……スリルとサスペンスに満ち溢れた隠密の気分を味わいたかった。それだけです。あとの人生は味噌を作りながら……辰樹の夢が宇宙へ羽ばたいて行くのを見守るだけで充分じゃないですか」
「平凡な爺いになって……五平餅焼いて……? そんな生活できんのかよ。あんたみたいな、根っからの隠密が」
「そうですね」
そう言って、坂井はちょっと寂しそうに微笑して茶をすすった。
「――まあ、日常に退屈したらあなたのところへ行って、スパイの就職口を探してもらいますよ」
「調子のいい事言いやがって……」
中川は苦笑した。
それがいちばん坂井らしい生き方のようにも思えてならない。
「俺も……新しいスパイ募集の広告を出すかな」
「またとんでもない応募者がくるんじゃないですか?」
「まあ、それも日常のサスペンスと思えば苦にならねえよ」
「私が根っからの隠密なら、あなたは根っからの女衒だ。真奈美くんを泣かせるような真似はしないで下さいよ。死んだ辰樹に私が恨まれる」
「大丈夫、俺って見かけより結構、ナイーブだから(^_^)。嫁さん孝行して守ってもらうよ」
その中川の言葉の意味が良く分からずに坂井は首を傾げた。
だが、話をはぐらかすように中川は腰を上げた。
「テレビと一緒にね、古い映画のビデオテープも取ってあったんですよ。あなたも観て行きませんか」
「いや……真奈美連れてそろそろ帰るよ。新婚旅行に出発する前に、片付けなきゃならない仕事があるしさ」
「そうですか」
「……じゃあな、また来るよ。五平餅食いに」
中川はそう言い残して土間に降りた。
その背後で、坂井は古いVHSのテープをケースから取り出してデッキに入れた。その目は……もうテレビの画面にくぎ付けになっていた。
中川は音をたてないようゆっくりと襖を閉め、店の出口へ向かった。
四畳半の座敷から、古いビデオテープのざらついた音質でR.シュトラウスの「ツァラトウストラはかく語りき」のメロディーが聞こえはじめていた。
新しい「企業内スパイ」の募集広告を出したところ、複数 |
の企業から派遣の要請が来る。内容はボーナスの査定、社 |
内不倫の調査など。人材不足に泣かされる日々が続く。 |
日下部真奈美
結婚後は中川真奈美となる。『佐々木義一を社長さんにし |
ちゃおう作戦(仮)』の余韻で夏休みにも補習授業を受け |
る事となる。進級は何とかクリアできそうだが、7月末の |
テストに合格しないと新婚旅行(三宅総研のバックアップ |
による)に行けないため猛勉強の毎日を送る。 |
アーマス・グレブリー
相変わらず佐々木建設に派遣社員として籍を置く。エジプ |
トの井戸堀りプロジェクトへの参入がめでたく決定。中川 |
に餞別としてサンオイルをもらう。 |
杜沢跡見
真奈美に「新妻料理の心得」なる数十頁に送る手書きのテ |
キストを送ってアフリカへ出発。 |
タンザニアで飛行機事故に遭い、行方不明となる。 |
森沢香南
新居でのキャンプ生活を早くも管理人に嗅ぎつけられ、電 |
気炊飯器をもらう。洋上高校の編入試験を超低空飛行で下 |
腹をこすりながらも何とかクリア。中川はマイヤーの裏工 |
作による裏口入学だと踏んでいる。真奈美と一緒に夏休み |
の補習に通うが、7月末の試験に受かるのはメドはまった |
く立っていない。 |
ハインリヒ・フォン・マイヤー
軍事学部助教授として講義を再開。夏期キャンプ講習に潜 |
り込んだ香南に寝込みを襲われる。蠍固めを食らいそうに |
なったが、体格差のハンデに救われる。学部内での噂はと |
どまるところを知らず、「親子ほども年が離れた相手」が |
いつの間にか「森沢香南は助教授の隠し子」という方面に |
発展し、現在は近親相姦説まで流れている。噂については |
一貫して「ノーコメント」の姿勢を崩さない。 |
佐々木浩二
るるいえ海底開発のプロジェクトに参加。水族館設立の準 |
備のためという名目でアマゾンへ魚釣りに出かける。 |
坂井俊介
味噌作りに没頭する日々が続く。真面目に商売をするよう |
になったため、固定客がわずかながら増えた。店の奥の座 |
敷は相変わらず溜まり場となっている。 |
CAST |
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中川克巳 | 日下部真奈美 | アーマス・グレブリー | 杜沢跡見 |
広川庵人 |
佐々木義一 |
ハインリヒ・フォン・マイヤー | 森沢香南 |
椎摩 渚 |
神野麗子 |
チャン・リン・シャン |
諏訪 操 |
エヴァゼリン・フォン・ブラウン | 下部瑠子 | オットー・シュトライヒ | コンラート・ハイドリヒ |
佐々木浩二 | 雅 一 | ミハイル・ケッセル | 石岡浩之 | 野村明彦 | 夜木直樹 |
聖 武士 | シータ・ラム | アインシュタイン |
西崎昌明 | 高槻洋二 | 牧田伸也 | 秋山 守 | 三橋剛蔵 | 菅野 匡 | 諏訪周三 |
ジーラ・ナサディーン | シーラ・ナサディーン | 中嶋千尋 | 三日月迅 | 三輪祝詞 | 火乃令慈 | 日下部真砂美 |
榊原紀美枝 |
白葉 透 | 佐々木辰樹 |
坂井俊介 |
協賛 |
佐々木建設 |
DGS |
洋上大学農業工学科 |
協力 |
人材派遣ゼロワンSTAFF |
手作り味噌の店「こうじや」 |
味の屋 |
洋上大学軍事学部 |
洋上大学水産試験場 |
洋上大学三宅総研 |
レジャーランドSNS |
パソコンショップARE |
喫茶ウィンズテイル |
豊島マリーナ |
吉沢派遣株式会社 |
菱島駿河重工株式会社 |
ジャパン・タイム株式会社 |
ダラットホテル |
白薔薇 |
伊島プリンスホテル |
この物語はフィクションであり、登 |
場する名称等は、実在の人物、団体、 |
事件とは一切関係ありません。 |
原作・執筆 | 上原尚子 |
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設定原案 | 楠原笑美 |
初出 | Network−GL(グローバルデータ通信) |